異邦の香りーネルヴァル『東方紀行』論
2011年 02月 22日
野崎歓准教授が、「異邦の香りーネルヴァル『東方紀行』論」で読売文学賞を受賞されました。
おめでとうございます。
ネルヴァルという方のことなぞまるで知らなかったのに、
野崎先生の本だということだけで手にとりました。
あとがきまでいれたら400ページを優に越えた大著です。
最初のページに石川淳の『山桜』の引用文があります、学術的研究書ならば読めないかなと思ってましたがこちらはおおいに違うようです。
読みやすくて、読んでいくうちに、まるで自分でネルヴァルの文を実際に読んでいるかのような気さえします。
野崎先生が抜粋して下さったレインとネルヴァルの対比は実験動物の観察日記のようなレインの文章とロマン溢れ想像力が刺激されるネルヴァルの文の差を如実に理解させてくれますし、
ネルヴァルの東方紀行は大方の紀行文が実際に行った土地を正確にああだったこうだったと描写しているのに対して、旅行しているのもネルヴァル自身なのかもあいまいで、旅の目的もハッキリとはせず、なにを見に旅行しているのだか、行き当たりばったり的な群集の中に自己を消して紛れ込む旅をよしとしています。
旅人=ネルヴァルと確定していないので、紀行文じたいが全て実際にあったことなのか虚構をまじえたものなのか、まるで物語を読んでいるかのような、不思議な趣をもっていることや、
かぐわしく香る濃密な空気を含んだ夜の描写や、
当時のヨーロッパ特にフランスがイメージとして描いているオリエントの誤った情報への誤謬をただそうとする直接的な主張など、
ネルヴァルの本は一冊たりとも読んだことがないのに野崎先生の解析によりネルヴァルの本質に迫れた気さえもします。
ぜひ先生にはこのご本のような学問としての研究書としても「批評」「エッセイ」としても読むことの可能な本を書き続けていただきたいと勝手に願っております。
おめでとうございます。
ネルヴァルという方のことなぞまるで知らなかったのに、
野崎先生の本だということだけで手にとりました。
あとがきまでいれたら400ページを優に越えた大著です。
最初のページに石川淳の『山桜』の引用文があります、学術的研究書ならば読めないかなと思ってましたがこちらはおおいに違うようです。
読みやすくて、読んでいくうちに、まるで自分でネルヴァルの文を実際に読んでいるかのような気さえします。
野崎先生が抜粋して下さったレインとネルヴァルの対比は実験動物の観察日記のようなレインの文章とロマン溢れ想像力が刺激されるネルヴァルの文の差を如実に理解させてくれますし、
ネルヴァルの東方紀行は大方の紀行文が実際に行った土地を正確にああだったこうだったと描写しているのに対して、旅行しているのもネルヴァル自身なのかもあいまいで、旅の目的もハッキリとはせず、なにを見に旅行しているのだか、行き当たりばったり的な群集の中に自己を消して紛れ込む旅をよしとしています。
旅人=ネルヴァルと確定していないので、紀行文じたいが全て実際にあったことなのか虚構をまじえたものなのか、まるで物語を読んでいるかのような、不思議な趣をもっていることや、
かぐわしく香る濃密な空気を含んだ夜の描写や、
当時のヨーロッパ特にフランスがイメージとして描いているオリエントの誤った情報への誤謬をただそうとする直接的な主張など、
ネルヴァルの本は一冊たりとも読んだことがないのに野崎先生の解析によりネルヴァルの本質に迫れた気さえもします。
ぜひ先生にはこのご本のような学問としての研究書としても「批評」「エッセイ」としても読むことの可能な本を書き続けていただきたいと勝手に願っております。
by spiaggia_corrente
| 2011-02-22 20:34
| 本